特許事務所事務員の年収、仕事内容、福利厚生、残業は?勤続年数5年の現役女性事務員に体験談を聞いてみた

ペンネーム:雪味大福
年齢:30歳
学歴:四大卒
性別:女性
勤続年数:5年
年収:450万円

特許事務所で事務員。カレンダー通りの土日祝日休み。勤務時間は9時から17時。産業財産権の管理業務がメイン。

私は、特許事務所で事務員として働いています。
事務にはいくつか部署がありますが、その中でも私は国内案件を担当する部署にいます。
特許事務所における国内案件事務担当は、日本国特許庁に出願される産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の管理業務が主な仕事になります。

つまり、産業財産権に関わる書類の作成や確認です。
国内外の法人や個人が日本国特許庁に産業財産権を出願しようとする際に、依頼がくると、まずは士業である弁理士(聞きなれない職業かもしれません。法律事務所にいるのは弁護士、社会保険事務所にいるのは社労士、特許事務所にいるのは弁理士です。)が対応ます。
その指示のもと、事務担当が手続に必要な手続を調べ、書類を準備し、確認のうえで日本国特許庁に提出します。

具体的な仕事の流れは、まず依頼人と弁理士間で仕事内容や報酬等打ち合わせをします。
それを受け、事務担当は、特許や実用新案ならば弁理士が書いた明細書(発明の詳細な内容が書かれている書類)や特許請求の範囲(発明の簡単な内容)等の校閲、意匠ならば願書面の作成、商標ならば簡単な先願(以前に似た出願がないか)調査を行います。
出願人や代理人の情報が書かれた願書を作成し、日本国特許庁に提出します。

出願後は案件ごとに期限管理を行いながら、公報(出願された内容を公開するための誌面)や日本国特許庁から送られてくる発送書類(拒絶理由通知書や補正指令書等)を依頼人に送付したり、また、発送書類に対して応答(意見書や手続補正書)を日本国特許庁に送付したりします。

特許や実用新案を扱うには理系の知識が必要ですが、こうした書類のやりとりをするには理系の知識は必要はなく、事務員は全員文系出身でした。
ちなみに、米国や中国等、海外の特許庁に出願をする際には、現地の代理人を通じて手続を行います。

英語を使うことが主ですが、中国への出願数が増えている昨今は、中国語を使う機会も増えており、外国語が好きな方にとっては恰好の職場であるといえます。

休日は、カレンダー通りの土日祝日休みです。
有給は、勤続年数にもよりますが、年間20日付与され、余った場合は次の年に繰り越すことも可能です。

夏休みは3日間付与され、7~9月の間に自由に消化できます。
私は、2017年の夏休みは、土日と3日間の夏休み、2日間の有給をくっつけ、8月に10連休をいただきました。

勤務時間は9時から17時で、残業の有無はその時期の業務量によります。
年度末の3月は一年で最も忙しく、毎日数時間残業をしなければなりません。

非常勤職員からの士業の正社員になったので社会的評価があがった。年収も増え身なりにお金をかけられるようになり、異性からの評価も良くなった。

公的機関の非常勤職員から、士業の事務所の正社員の転職だったので、社会的評価がとても上がりました。
公的機関の非常勤では、楽天カードくらいしかクレジットカードを作れませんでしたが、今ではあらゆる種類のクレジットカードを作ることができます。

親や親戚、友人からの私に対する評価も上がりました。
私の中身は何も変わっていないのに、職業をかえただけでこんなに評価が違うのかと愕然としました。
また、年収も100万円から450万円に上がり、身なりにお金をかけられるようになり、異性からの評価も上がりました。

作業のスケジュールが読めないのが大変。弁理士には人格破綻者も多く我慢ならないときがある。

業務量が読めないことが多いので、大変だと思います。
弁理士の仕事の進め方にもよるのですが、定時間際に大量の仕事を振ってきたり、夜遅い時間になっても指示がもらえず、帰宅できないこともあります。

弁理士は、特許事務所に所属はしているのですが、基本的には個人事業主です。
ボス弁理士とパートナー弁理士、アソシエイト弁理士間の上下関係は緩く、注意する人間がいないため、通常の会社員よりも人格破綻者や仕事の段取りが下手な人、ビジネスマナーがおかしい人が多々見受けられます。

私たち事務員からは何もいえないので、プライドが高く、お山の大将、裸の王様状態の弁理士をうまくおだて、円滑に仕事を進める必要があり、我慢ならない時があります。

前職との作業の進め方に戸惑った。役所と民間ではスピート感も違う。

業務のスピードの速さと、仕事の進め方の違いにとても戸惑いました。
というのも、公的機関は役所の世界であり、いわゆるビジネスの世界ではないため時間の流れがのんびりしており、一つの業務を一か月以上、もしくは一年以上かけて進めることが多いです。

一方の特許事務所はビジネスの世界であり、手続期限や回答期限が明確に決められており、そしてそれが今週中、もしくは今日中、ということも日常茶飯事です。

また、私がいた公的機関では個々人が独立して仕事を進めていましたが、特許事務所はチーム制であり、多くの人間に根回しをし、連絡を取りながらチームで仕事を進めるので、その仕事の進め方のギャップに戸惑い、最初はとてもストレスが溜まり、10kgほど太ってしまいました。

特許業界は給与の水準が高い。一度業務を覚えれば、年齢を重ねても転職することができる。

特許業界は給与の水準が高く、おすすめです。
実際、転職当時は25歳、未経験でしたが、年収400万円以上いただけましたし、勤続5年になった今は、年収450万円になりました。
事務職の女性にしては、給与が高いと言われます。

また、ニッチな業界であるために、一度業務を覚えれば、年齢を重ねても転職することができ、そして何歳でも事務員から弁理士を目指すことも可能(ただし、弁理士試験に合格することが必須)です。

仕事は楽ではなく、転職してから今まで勉強の毎日ですが、知識欲が満たされ、とても楽しいです。
ただし、特許事務所は所員数が10名ほどの零細組織も多く、所長の人柄によって事務所の雰囲気や働きやすさが違うため、採用面接の際に注意が必要です。
あなたが素晴らしい特許事務所に巡り合えることを、願っています。